ワインの基礎知識ワインの基礎知識

ワインとは

ワインってどんなお酒?

ぶどうを原料とした醸造酒であるワインは、極めて歴史の古いお酒のひとつと言われています。ぶどうは有史以前から自生し、人々に珍重されていました。貴重な食料として保存されていたぶどうが自然につぶれ、その果汁がやがて発酵し、アルコールを含む液体となった──これがワインの原型というわけです。古代エジプトの壁画や、旧約聖書にも登場しているワイン。わたしたち人類ととても長いつきあいのお酒なのです。

現在、お酒は主に3つに分類され、ワインはビールや日本酒とともに、果物や穀物などの原料を発酵させて造った「醸造酒」に該当します。

酒類の分類酒類の分類

そして、ワインはさらに、製造法によって「スティルワイン(非発泡性ワイン)」、「スパークリングワイン(発泡性ワイン)」など4つの種類に分けられています。

ワインの分類

●スティルワイン(非発泡性ワイン)

炭酸ガスを含まない状態で製品化されたワイン。一般的に「ワイン」といえば、スティルワインを指します。赤・白・ロゼがあり、アルコール分は9〜15%程度。

●スパークリングワイン(発泡性ワイン)

炭酸ガスを中に封じ込めた発泡性のあるワイン。フランスのシャンパーニュ地方で造られたシャンパンがその代表的なものとして知られています。[さらに知る >>スパークリングワインを極める

●フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)

ワインの醸造過程で、あるいはベースとなるワインにスピリッツ(ブランデーなど)を添加して、全体のアルコール分を15〜22%程度まで上げて味わいのコクや保存性を高めたもの。スペインのシェリー、ポルトガルのポートワインやマデイラ、イタリアのマルサラなどが代表的です。[さらに知る >>フォーティファイドワインを極める

●フレーヴァードワイン(アロマタイズドワイン/香味付けワイン)

スティルワインに薬草や果汁、香辛料、甘味料などを加え、独特の風味をつけた香り高いワイン。スペインのサングリアやイタリアのヴェルモットなどが有名で食前酒や食後酒、またカクテルの原料などに用います。

また、ぶどう以外の果物で造った醸造酒は「フルーツワイン」と言われ、果実を圧搾し、果汁に酵母を加えて発酵させます。原料はりんご、もも、さくらんぼ、いちご、キウイなどさまざま。フランスではりんごを原料とした醸造酒・シードル(cidre)が古くから愛されています。

ぶどうの品種と特徴、味わいの違い

日本で生産されているぶどうは、その8割が生食用。しかし、世界中で収穫されるぶどうは、約8割がワイン用です。それぞれの産地で、気候や土壌に合った栽培品種を選び、製造方法を工夫して、より高品質なぶどうを作り上げようと努力をしています。
ワイン用のぶどうは、次のような環境が栽培に適しています。

気候条件

●年間平均気温

10〜20℃(10〜16℃が最適)。
北緯30〜50度の地域と、南緯30〜50度の地域がこれに該当します。

●日照

ぶどうの開花から収穫までの約100日間の照射時間が約1,000〜1,500時間。

●年間降雨量

約500〜900mmが理想。春と冬には雨が多く降り、夏は適量の雨とともに、光合成に欠かせない熱を得られることが望ましい。

●土壌条件

一般にぶどう栽培には水はけに優れ、根が深く成長できる通気性に優れた土壌がよいとされています。また、土壌の構成によって同じぶどう品種でも造られるワインの個性が大きく変わってきます。

代表的ぶどう品種

カベルネ・ソーヴィニヨン
●赤ワイン用

[カベルネ・ソーヴィニヨン]
赤ワイン用の代表的品種。フランスのボルドー地方が代表的な産地です。芳醇でコショウやカシスを思わせるスパイシーな香りと、酸味と渋みのバランスのとれた深い味わいのワインを産み出します。

カベルネ・ソーヴィニヨン

[メルロー]
カベルネ・ソーヴィニヨンに比べてやや早熟な品種です。豊かな香りと丸みのある風味、やわらかな口当たりのワインとなります。

[ピノ・ノワール]
フランスのブルゴーニュ地方を代表する品種。渋みは控えめで、酸味が高く、フルーティな香りのなめらかさのあるワインとなります。

シャルドネ
●白ワイン用

[シャルドネ]
世界的に人気のある白ワイン用の品種。香り高く、酸味とコクのバランスがとれたキレの良い辛口ワインになります。シャンパン用としても知られています。

シャルドネ

[ソーヴィニヨン・ブラン]
際立った香りとさわやかでしっかりとした酸味のあるフレッシュな辛口ワインを産み出します。セミヨンとブレンドして使用されることも少なくありません。ボルドー地方の主要品種で、ニュージーランドをはじめとして世界各地で栽培されています。

[セミヨン]
優雅な香りを持つ繊細な味わいが特徴。主にソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることが多く、ワインの酸味を緩和し、丸みを帯びた香りを与えます。貴腐ワインにも使われています。

1キログラムのぶどうから搾汁される果汁、ワイン(赤ワイン)の量は、600ml〜800ml。ワインはぶどう果実に含まれる糖分を直接発酵させるので、穀物を原料とする日本酒やビールと異なり、基本的に「仕込み水」として水を用いることはありません。それだけに原料となるぶどうの品質がそのままワインの品質となってあらわれます。良いワインは良いぶどうから生まれるのです。そしてぶどうの品質には、ぶどうの品種、原産地、その年の気候など自然条件が大きく影響します。

■味わいの違い

同一品種でもぶどうの産地によって、そこでできるワインのタイプは大きく異なります。それぞれのぶどう産地の降水量、土壌の排水性、日照時間、気温の違いによって、ポリフェノールや酸、アミノ酸などの味の成分や香りの成分などに違いが生まれます。また、栽培方法やワインの醸造・熟成の方法の違いによっても、味わいは大きく変わります。シャルドネは低温で発酵させると、マスカットやバナナなどのような、フルーツ系の香りが強くなり、オーク樽で熟成する場合には、樽の種類や内面の焼き方、おりとの接触時間の長短などによって香味が大きく変わります。同じシャルドネのワインでも、そのタイプは無限にあると言ってもいいぐらい、豊かなバリエーションがあります。

貴腐ぶどう

またドイツなどで造られている貴腐ワインとは、白ワイン用ぶどう品種の成熟した実の果皮にボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)が繁殖することで、さらに果汁の成分が濃縮され、独特の風味がついたワインです。
コクとうまみのある濃厚な極甘口(ごくあまくち)のデザートワインになります。
最も盛んに貴腐ワイン造りが行われているのが、ドイツのライン地方とモーゼル地方、フランスのボルドー地方ソーテルヌ地区、ハンガリーのトカイ地方などです。

貴腐ぶどう

ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、フランスのソーテルヌ、ハンガリーのトカイは、世界三大貴腐ワインと呼ばれています。

ぶどう品種は同じでも、産地や製法の違いによって生まれるさまざまなタイプを楽しめるのも、ワインを味わう醍醐味のひとつです。

ワインの造り方

■ワインができるまで

その昔、ワイン造りは、熟したぶどうを大きな桶に入れ、足で踏んで果汁を搾るところから始まりました。もちろん、現在は機械化されていますが、その醸造の過程はかつての造り方とほとんど変わっていないと言われています。

一般にワイン造りは赤ワイン造りの工程が原型となっています。
秋、成熟し、糖度が十分になった頃に収穫されたぶどうは、房のまま除梗機で果梗(軸)が取り除かれます。それから、果汁を搾り、果皮、種子とともにタンクに入れて発酵させます。発酵後、圧搾機にかけて果皮と種子を取り除き、樽(またはタンク)に詰めて熟成。その途中で、「おり」と呼ばれる沈殿物が出るため、その上澄みだけを別の容器に移し替える「おり引き」を何度かくり返します。熟成を終えたワインは、ろ過処理により不純物を取り除かれ、びん詰めされます。

白ワインは発酵前に果皮や種子が取り除かれるため、色がつきません。ロゼワインについては製造法がいくつかありますが、発酵の途中で果皮と種子を取り除く方法が一般的です。

びん詰め後にも貯蔵庫で熟成されるものもありますが、白ワインやロゼワインは比較的熟成期間が短く、赤ワインでもフレッシュな軽い飲み口を楽しむ熟成の浅いものがあります。旬の味わいとして楽しむボージョレ・ヌーヴォもそのひとつ。みなさんにもすっかりおなじみですね。

ワインの造り方ワインの造り方

ロゼワインの造り方

ロゼワインの製造方法はいくつかあります。以下に代表的な製造方法をご紹介します。

●セニエ法

赤ワイン用の黒ぶどうを使用。赤ワイン製造と同じく、ぶどうをつぶしてタンクに入れ、短期間静置した後、果汁を抜き取り、淡く色づいた果汁を発酵させます。赤ワインと同じく果皮とともに発酵を行い、ある程度色がついた段階で果皮を取り除き、果汁だけで発酵を継続する場合もあります。

●直接圧搾法

赤ワイン用の黒ぶどうを使用。白ワイン製法と同じく、ぶどうをつぶしてすぐに搾汁し、果汁だけで発酵を行います。搾汁工程中に果皮からアントシアニン(赤ワインの色素)が果汁中に若干移行するので、ロゼ色がつきます。

●混醸法

発酵前の黒ぶどうと白ぶどうを一定の割合で混ぜて発酵を行う方法。
ヨーロッパでは、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造ることは禁じられていますが、シャンパンおよびスパークリングワインでは、赤ワインと白ワインを別々に造り、後に両者をブレンドする方法もあります。

「甘口」と「辛口」の造り方

発酵によってぶどう由来の糖分がアルコールに変わりますが、この糖分がアルコールに変わる程度によって、辛口、甘口が決まります。糖分をほとんどアルコールに変えてしまえば辛口のワインになり、糖分の一部しかアルコールに変わっていないうちに発酵を止めてしまえば、糖分が十分残った甘口のワインになります。そのため、辛口の方がアルコールが高くなり、甘口の方はアルコールが低くなる傾向にあります。また、甘口ワインの造り方にはいくつかありますので、以下にご紹介します。

●貴腐ワイン

フランス・ボルドーのソーテルヌやドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼが有名。ある特定の環境下で、ぶどうの果皮に一種のカビ(Botrytis cinerea)が育成し、ぶどうから水分を奪うことで、ぶどうの成分が濃縮されます。このぶどうから得られる糖度の高い果汁を醸造します。

●アイスワイン

カナダやドイツが有名。冬場、外気温が下がり、木になった状態で凍結したぶどうをすぐに搾ります。そうして得た通常より糖度の高い果汁を醸造します。

●干しぶどうワイン

フランス・ジュラの藁(わら)ワインやイタリアのパシートが有名。ぶどうを収穫後、風通しの良いところに一定期間置いて干しぶどう状にし、それから得られる糖度の高い果汁を醸造します。

●発酵停止ワイン

スペインの甘口のシェリーやポルトガルのポートワインなど酒精強化ワインが有名。発酵の途中、目的の糖度に達した段階で発酵を停止し、糖分を残します。

このほか、辛口ワインに後から糖分を足したものもあります。

ワインの「酒石」と「おり」って何?

ワインの「酒石」
●酒石

ワインの「酒石」は酒石酸(果物の中ではぶどうにだけ含まれる酸味成分)とミネラル(カリウムやカルシウムなど)が結合してできた結晶性の物質です。この「酒石」はワイン中の色素成分とも結合しやすく、黄色や赤の結晶となることもあります。温度が低くなると生じやすくなりますので、冷蔵庫や寒冷地の保管には注意が必要です。

●おり

ワインのびんの底や内側、コルクに沈殿物が付着していることがあります。これはワインの成分の一部が、溶けにくい物質となって沈殿した「おり」です。「おり」には、タンパク質やタンニンなどからできたさまざまな成分が含まれています。
「酒石」に限らず「おり」はワインの成分が結合し、沈殿したものですので、身体に害を及ぼすものではありません。
もし「おり」や「酒石」が発生してもまったく心配はありませんが、よりおいしくワインを楽しむためには、しばらくびんを静置して「おり」を底に沈めた後、ワインを静かにグラスに注ぐか、ワインを別の容器に移し替えてください。

ワインの格付けとワイン法

ワインは、ぶどうの品種、ぶどうの育つ土壌、栽培法、気候、収穫時期、製造法、貯蔵法などが相まって、その個性が生まれます。ですから、それぞれのワインの個性を明確にし、品質を保っていくためには、生産地域を狭く限定して規制していくことが必要になります。そのために作られたのが「ワイン法」であり、その中で品質の基準となっているのが「格付け」です。

「ワイン法」が生まれたのは1930年代の中頃。ヨーロッパでは3年続きの悪天候と経済不況に陥り、有名産地を抱えるフランスのワイン産業も打撃を受けることになりました。そこには、フランスの有名産地を騙るワインが大量に出回るという不幸もあったのです。すでにフランスの人気産地であった、ボルドー、ブルゴーニュ、シャトーヌフ・デュ・パプなどでは、その対抗手段として法律の制定へと動き始めることになりました。これが「ワイン法=原産地統制名称(A.O.C.)」の始まりです。

これは、外部に対しては有名産地を騙った偽物の製造を防ぐ狙いがあり、産地の内部的にはそれぞれの伝統を守り、個性や品質を守るという効果があります。ヨーロッパ連合(EU)に加盟しているワイン生産国においては、2009年8月、新たなワイン法の規定が発令され、新しい法律に基づき、ラベルの記載などの改訂が行われました。それぞれの名称を頭に入れておけば、初めてのワインでもそのクラスや品質を推し量ることができるでしょう。

EUにおけるワインの格付けと主要国の格付け

EUと欧州主要国のワイン格付け一覧

スパークリングワインを極める

■スパークリングワインとシャンパンの違い

スパークリングワインとは、炭酸ガスをびんの中に封じ込めた発泡性のあるワインの総称。フランスのシャンパンも、イタリアのスプマンテもスペインのカヴァも、すべてスパークリングワインの一種であり、一般的には3気圧以上のガス圧がある発泡性ワインを指します。
「シャンパン(フランス語ではシャンパーニュ)Champagne」はスパークリングワインの代名詞のように有名ですが、これはフランスのシャンパーニュ地方で造られるA.O.C.ワイン固有の名称です。シャンパーニュ地方でも特定地域の、特定のぶどう品種を用いて造られるもので、栽培、醸造などの生産条件についても、A.O.C.法により厳しく規定されています。ですから、同じフランス国内で造られていても、規定から外れるものはシャンパンと呼ぶことはできません。

スパークリングワインの製造法は主に3種類

●トラディショナル方式

スティルワインをびんに詰め、糖分と酵母を加えて密閉し、びん内で二次発酵を起こさせるもの。発酵後も熟成、おり引きなどが必要な、最も手間とコストがかかる方式で、最高級スパークリングワインの製造に用いられます。シャンパン方式とも呼ばれ、その名の通りシャンパンはこの方式によって製造されます。

●シャルマ方式

スティルワインを大きなタンクに密閉し、その中で二次発酵を起こさせる方式。密閉タンク方式ともいい、短期間に製品化が可能。製造過程でワインが空気に接触しないため、マスカットやリースリングなどを原料とする、ぶどうのアロマを残したい発泡性ワインを造る場合に用いられます。一度に大量に生産できるため、コストを抑えたい場合にも広く用いられます。

●トランスファー方式

びん内二次発酵をさせた炭酸ガスを含んだワインを、加圧下のタンクに移し、冷却、ろ過した後、新たにびん詰め。トラディショナル方式を簡略化したものと言えます。

そのほかには、発酵途中のワインをびん詰めし、その後の発酵はびん内で行う「メトード・リュラル方式」、びんに入ったワインに炭酸ガスを注入する「炭酸ガス注入方式」があります。

世界各国の主なスパークリングワイン

●シャンパン[フランス・シャンパーニュ地方]

シャンパーニュ地方で生産され、A.O.C.法の厳しい規定を満たしたもののみが、その名称を用いることが許されています。シャンパーニュ方式とも呼ばれるトラディショナル方式で製造。その味は、ブリュット・ナチュール(極辛口、リキュール補充なし)、エクストラ・ブリュット(極辛口)、ブリュット(極辛口、エクストラよりリキュール補充度が多い)、エクストラ・ドライ(辛口)、セック(中辛口)、ドミ・セック(中甘口)、ドゥー(甘口)の7段階に分かれています。シャンパン以外のスパークリングワインは、「ヴァン・ムスー(Vin mousseux)」や「クレマン(Cremant)」と呼ばれます。

●スプマンテ[イタリア]

イタリアの全州で製造され、ガス圧は20℃で3気圧以上。1〜2.5気圧の弱発泡性ワインは「フリッツアァンテ(Vino Frizzante)」と称されます。代表的な生産地区は、ピエモンテ州、ロンバルディア州、トレンティーノ・アルト・アデンジェ州、ヴェネト州。トラディショナル方式で製造されたものを「スプマンテ・クラッシコ(Spumante Classico)」と呼び、メトード・クラッシコ(Metodo Classico)と表示されます。シャルマ方式によるものは、「フェルメンツィオーネ・ナトゥラーレ(Fermentazione Naturale)」で、その表示はメトード・シャルマ(Metodo Charmat)。D.O.C.G.に指定されているピエモンテ州のアスティ地区で生産されるアスティ・スプマンテは、シャルマ方式を応用したフレッシュさを保つために考案された特殊な方法で造られます。

●カヴァ[スペイン]

スペインのスパークリングワイン(エスプモーソ)の中で、特に有名なのが「カヴァ(Cava)」。びん内で二次発酵を行うトラディショナル方式で造られ、二次発酵から口抜きまで最低9カ月の熟成が義務づけられています。原産地は、カタルーニャ以外にアラゴン、ナバーラ、リオハ他の各州に分散していますが、95%以上のカヴァがカタルーニャ州のペネデス周辺で生産されている特別D.O.に指定されており、他の原産地呼称とは異なり、地域の指定はなされていません。主にマカベオ、パレリャーダ、チャレッロという3種類のぶどう品種を原料とし、少量のシャルドネ(白)、ピノ・ノワール(赤)などが使用されることもあります。

スパークリングワインの主な産地
■スパークリングワインのグラス

立ち上がってくる気泡を楽しみながらゆっくりと味わうため、フルート型の細長いグラスを使用し、8分目を目安に注ぎます。お祝いの席やパーティなどでは、乾杯用に、口が広く底の浅いクープ型(ソーサー型)のグラスを用いることもあります。

フォーティファイドワインを極める

■フォーティファイドワインとは

ワインの醸造工程中に、アルコール分40%以上、ときには95%のブランデーやアルコールを添加し、全体のアルコール分を15〜22%程度まで高くして、コクや保存性を高めた酒精強化ワインを指します。
フォーティファイドワインには、甘口と辛口のものがあり、一般的に甘口はデザート用、辛口はアペリティフ(食前酒)用として飲まれますが、近年では食前、食後に限らず自由な飲み方をされることも多いようです。

フォーティファイドワインの主な産地

世界三大フォーティファイドワイン

●シェリー[スペイン]

アルコール分<フィノ、マンサニーリャ=15%以上、アモンティリャード=16%以上、オロロソ=17%以上>
イベリア半島最南端に位置するヘレス・デ・ラ・フロンテラを中心とした地域で造られるシェリーはアルコール度数や醸造方法などによりフィノ、マンサニーリャ、アモンティリャード、オロロソなどの種類に分けられます。
熟成したワインの樽に、若いワインを注ぎ足していき、均一した品質のワインに仕上げるソレラシステムという独特の熟成方法によって造られます。

●ポート[ポルトガル]

アルコール分<16.5〜22%>
“ポルトガルの宝石”とも称されるポートワインを産出するD.O.C.ポルトは、1756年に世界で初めての原産地管理法の指定を受けた地域。ドウロ川上流はポートワインの故郷として知られています。発酵途中にアルコール分77%のブランデーを加えて発酵を止める製法で、独特の甘みとコクを生みます。
一般的に、黒ぶどう品種を原料に3年の熟成後、出荷されるルビー・ポート、ルビー・ポートをさらに樽熟成させたトゥニー・ポート、白ぶどう品種を原料に3〜5年熟成させるホワイト・ポートに分類されます。そのほか、公的に定められたものとして、5種類のスペシャルタイプのポートワインがあります。

●マデイラ[ポルトガル]

アルコール分<17〜22%>
マデイラワインは、リスボンから南西に1,000km離れた大西洋上に浮かぶマデイラ島で造られることからその名がつきました。17世紀の帆船時代、赤道を越える暑くて長い航海を終えたワインが酸化により特有のフレーヴァーを有するようになったのが、その誕生の由来とされています。ワインの大敵である「酸化」が、偶然にもマデイラに独特の風味をもたらしたというわけです。しかし、そのワインはスティルワインが変質したもので、酒精強化ワインとしてアルコールが加えられるようになったのは18世紀。ジブラルタル海峡を巡る紛争により航路を失ったことから、島での貯蔵を余儀なくされたマデイラの人々は、貯蔵していたワインの一部を蒸溜し、残りのワインに加えることで貯蔵効率と保存性を高めたのです。そして、後にそのワインを味わってみると、ことのほか味わい深いものとなっていました。以来、酒精強化はマデイラワインに欠かせない手法となったのです。