環境意識を育む活動:環境文化講座 豊かな自然や文化を未来に引き継ぐために

「江戸のごちそう  日々の暮らしのなかで外食を楽しんだ江戸時代の人びと」

講師 田中優子氏(法政大学総長)

第58回アサヒビール環境文化講座は、江戸の芝居小屋や屋台の雰囲気に囲まれる中、「江戸のごちそう」をテーマに法政大学総長の田中優子氏をお招きして開催いたしました。

上方文化が築いた江戸時代のごちそう

本講座のテーマは「江戸のごちそう」。江戸時代の文学や文化を専門として研究されている田中さんのお話では、「江戸」は独自の食文化という点ではむしろ乏しかったと言われており、現在の京都や大阪を中心とした上方で形成された食文化が江戸に移入していった時代と言われているそうです。そこで本講座では、そのような江戸時代のごちそうについて様々な観点からご紹介いただきました。

江戸時代の食文化に影響を与えた日本の変化

江戸時代の内、徳川綱吉が将軍を務めた元禄時代は、日本が大きく変わった時代でした。
1630年には外交システムが整い、日本が大きく生まれ変わろうとしていましたが、まだ戦国時代の様相も残っている中で、職を失う武士が増えていました。そのような時代における肉食は現在よりも多様でした。現在は肉食と言えば牛、豚、鳥肉が主となりますが、元禄時代では、犬と出会った途端に犬を殺して食べてしまうほど犬がよく食されていた他、鹿、狸なども食べられていました。下流階級の人たちは様々な野生の鳥を食べていたので個体数が少なくなったという説も挙げられています。そのような中、当時の江戸幕府将軍であった徳川綱吉が生類憐みの令を発令しました。儒教に加えて仏教も学んでいた綱吉は、生類を簡単に殺すことに抵抗感が生まれ、食が豊かな時代に無駄に殺生する社会の空気を変えたかったのではないかと考えられます。
続いて、食に関して元禄時代に起きた大きな変化と言えば、農業の技術革新です。品種改良が始まり、それに関する書物も出てきています。国内で薬物になる植物を栽培して国産品を次々と生産し、ものづくりの日本が生まれました。
また、江戸時代の食文化に影響を与えた日本の変化として、流通革命も挙げられます。海側に大きな都市が生まれ、千石船が生まれたことで、遠くから食材が運ばれてくるようになり、北海道の昆布を江戸の人が食べるなど、遠方の食材を江戸で手に入れ多様な料理が可能となりました。

現在の食文化に通ずる江戸時代の食文化

江戸時代は現在の日本食に通ずる様々な文化が発展していった時代と考えることもできます。例えば味噌や醤油について、従来は各家庭で作ることが当たり前でしたが、江戸時代の食文化の形成と共に専門店が生まれ、味噌や醤油を専門店に買いに行く文化が生まれました。また、食が多様になるに伴い、それまで1日2食(朝・夕)であった食事に、午前と午後の畑作業の間に昼食(当時は畑作業の間の意味で「中食」)が加わり、1日3食の食事文化が形成されました。
また、現在の日本の食卓でも見られる食文化に、自分の茶碗やお箸、お膳で食事をする銘々膳の文化がありますが、この文化の始まりも江戸時代に見ることができます。自分のお膳を持ち食事をする文献が見られ、自分のことは自分でやる日本独特の文化が江戸時代の生き方として確立しました。

江戸時代お寿司はファーストフード!?

江戸時代には、江戸で屋台も発展していきました。当時の江戸は世界最大級の人口を持つ大都市で、全国から集まった武士が居住し密集していたため、震災や火災が起きると被害が周囲へ広まりやすく、食材が無くなることもありました。そのような有事の際に、食事に困ると頼る場として屋台がありました。やがて、有事の際のみでなく、通常の食事の際にも屋台で食事をするようになり、その役割を変えていきました。お寿司や天ぷら、ウナギは、今では高級料理として扱うお店が多いですが、江戸時代では、忙しい江戸の人が簡単に食べられる食事として屋台で振舞われており、どちらかと言えば現在のファーストフードの感覚で食べられていたようです。

以上のように、元禄時代を中心に多様な「江戸時代のごちそう」について田中さんにお話しいただきました。銘々膳の文化の例のように現在に通じるものもあれば、当時気軽に食べられていたお寿司の例のように現在とは異なる感覚のものもあり、私たちの食文化に影響を与えた様々な興味深い視点を知ることができました。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、江戸時代から築き上げられてきた豊かな食文化を守り楽しんで欲しいとのメッセージと共に本講座は終了しました。

田中 優子 (法政大学総長)

法政大学社会学部メディア社会学科教授(2012・2013年、同学部長)
法政大学国際日本学インスティテュート(大学院)教授
2014年より法政大学総長 江戸学者
専門:日本近世文化・アジア比較文化
1952年横浜生まれ。法政大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。文学修士。
近世文学(江戸時代の文学)を専攻するが、その後、研究範囲は江戸時代の美術、生活文化、海外貿易、経済、音曲、「連」の働きなどに拡がってゆく。さらに、中国文学を中心に東アジアと江戸の交流・比較研究、布や生活文化を中心にインド・東南アジアと江戸の交流・比較研究などに及んでいる。江戸時代の価値観から見た現代社会の問題に言及することも多い。

個人サイト
http://lian.webup08.jp/yuu/

 

  • 江戸時代を食という視点から見たことがなかったので、とても面白かったです。お茶碗やお箸が個人、銘々のものであるというのが日本独特文化で江戸とつながっていることに驚きました。(30代・女性)
  • 時代背景もよくわかり、とても充実した内容だったと思います。(40代・女性)
  • 田中さんのお話が大変興味深い。江戸の食物のお話がよく理解できた。(50代・男性)
  • 大変楽しかったです。やはり食文化ってすごい!(40代・女性)
  • 知らないことをたくさん知ることが出来て、たいへん面白かったです。江戸時代のお寿司の大きさなどは、豆知識として友人に話せそうです。(40代・女性)
  • 江戸時代の豊かさが目に見えるように伝わってきました。食文化を大切にしていきたいです。またぜひ続きを聴きたいと思います。(60代・女性)
  • 大変興味深いテーマだと楽しみにしておりましたが、予想以上でした。(60代・男性)

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