環境意識を育む活動:環境文化講座 豊かな自然や文化を未来に引き継ぐために

身近な自然、里山

講師 今森 光彦(写真家)

雑木林や田んぼなど、人と自然の共存でなりたつ里山は、私たちのいちばん身近な自然です。そんな里山の大切さや四季折々の散策のしかたについて、雑木林や琵琶湖の自然についてなど、写真家の今森光彦氏から、同氏のこれまでの経験をとおして話したたいへん興味深いお話をお聞きすることができました。

雑木林について

水源の森、子どもに森と雑木林がどう違うか、理解してもらうのが難しい。
森と雑木林の違いについて、クマがいるかいないかで区別すると子どもから聞いて、ものすごく明快な答えだったので、感動した。
森と雑木林のもう一つの違いは、バクテリアの数だそうだ。雑木林だと乾燥化が進んで、森の約半分くらいになる。つまり、雑木林では、ちょうど生態系の頂点(クマ)と下(バクテリア)がカットされた生態系であるということになる。
よく雑木林を熱帯雨林と比較されるが、生態系や生物多様性の面からいえば少しも遜色がない健全な森だ。雑木林なんてせいぜい100本くらいの木で構成されているくらい狭いのに、なぜ多様性が豊富なのか。昆虫も、小さい雑木林ほど多い気がする。
雑木林をより理解してもらうには、自分で手を加えることが重要。木を伐って、汗を流すことで森と一体になれる。

琵琶湖について

琵琶湖は「近畿の水瓶」と言われていて、事実その通りだし貴重さを表しているが、無味乾燥な、水瓶としての価値しかないようにも聞こえる。
ちょうど自分が子どものころ高度経済成長期で、激変する琵琶湖を目の当たりにしてきた。
単なる水たまりとみられ河川工事が進んだ結果、ヨシ原は大打撃を受けた。それでヨシ条例というものもできてヨシ原再生プロジェクトが組まれたが、ヨシを植えても定着しない。後に調査によって、ヨシは上流から運ばれてきた土砂の上でしか発芽しないということが分かった。
フナからも環境の変化をまざまざと体験してきた。子どものころ、4〜6月の雨の日に川が増水して水が濁ると、フナが卵を産みに水田にまで上がってきていた。水田は水位が下がると関を閉めてしまうので、何百匹というフナが水田に取り残される。それを子どもたちがこぞって生け捕りにしていて、それがすごく楽しかった。しかし、小学校5年生のときにフナが水田に来なくなった。雨が降っても川が増水せず水が濁らなくなっていた。

後に、琵琶湖の上流にダムの水門ができて、水量をコントロールできるようになったために増水することも水が濁ることもなくなったと知った。フナが来なくなったのはヨシ原がダメージを受けたと思われていたが、昨年の調査で、増水して水が濁るとフナは卵を産みたくなるということが分かった。こういったことは、環境というより、琵琶湖特有の体質がフナを生かしていたのだと思う。

雑木林のような、管理された森で生き物が多いという不思議さ。日本の絶滅危惧種の半数以上が里山にいる動植物だという。雑木林のような場所に生き物が多いのは、増水したり、木を伐るなどの「撹乱」があるからだという。その撹乱は人が行ってきたのだ。
日本の里山という環境は世界のなかでも希有だ。海外でも似たような言葉や地域があるが、日本では「撹乱」をうまく利用して、生き物たちと共有してきた。

人は琵琶湖、川、水田と分けて考えがちだが、生き物や水の流れから見ると、山があって、川、水田、琵琶湖と、縦に見ないとわからないことが多くある。

雑木林の写真を年配の方は懐かしんでくれるが、ぜひ子どもたちに未来の風景として見てもらいたい。生き物のたくさんいる雑木林を復活させていきたい。
里山の生態系を維持している撹乱に多様性の秘密があって、ずっとその写真を撮っていきたい。みなさんにも水源の森を守る活動に参加してもらえればと思う。

今森 光彦
(いまもり みつひこ)

1954年、滋賀県生まれ。写真家。
琵琶湖をのぞむ田園風景の中にアトリエを構え活動する。自然と人との関わりを「里山」という空間概念で追い続ける。一方、学生の頃から世界各国の訪問を重ね、亜熱帯雨林から砂漠まで、生物と人が生きるあらゆる自然を見聞きし取材している。
写真集に「里山物語」(新潮社)、「湖辺」(世界文化社)、「世界昆虫記」(福音館書店)、写真文集に「萌木の国」、「藍い宇宙」(ともに世界文化社)、「里山を歩こう」(岩波書店)など多くの著書がある。

環境文化講座トップ

PAGE TOP

ページの先頭へ戻る
公式SNS一覧
メルマガ登録

すべては、お客様の「うまい」のために

ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
ほどよく、楽しく、いいお酒。のんだあとはリサイクル。