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[カンパネラ]ビジネスパーソンにひらめきの鐘を

カンパネラとは

ビジネス書では語られない「職場人間学」

【職場人間学】「制限」があなたのメッセージを強くする 大手自動車メーカーの企画書、雑誌の編集……プロの現場はコミュニケーション・ノウハウの宝庫!

文:田代真人 写真:石塚龍彦

10.08.2015

職場の問題は酒場で解決できると信じるコンサルタント・田代真人氏。大学の教え子が抱える悩みは、コミュニケーションの本質を探る糸口になった。田代氏は自動車メーカーの社内企画書や雑誌の編集現場から、コミュニケーションにまつわる人の心理メカニズムが見えてくると言うが……?

あらゆる問題は酒場で解決できる。30年以上のビジネス生活で得た実感だ。別に酒に強いわけでもない。ただ酒場のあの雰囲気は人を楽観的にする。一人で飲んでもいいが、二人酒もまたいい。

僕の仕事はコンサルティング。ありがたいことに営業することなく、さまざまな業種からお仕事の依頼をいただく。しかし悩みの種は、というほどの悩みでもないが、産業カウンセラーの資格を持っているので、経営者や部課長はもとより新入社員からも相談されることが多い。実は本業よりもこちらに取られる時間が多いのだ。

今夜は、大学の教え子、4年生の黒木純子の就活の相談に乗っている。同僚の教授・米田利彦も一緒だ。場所は最近渋谷にオープンしたばかりライブカフェ&バー。心地よいアコースティックギターのライブ演奏が続いている。

この店の料理は、ニューヨーク系アメリカンな雰囲気。僕は先に頼んでいたクラムチャウダーを食べながら話を続けた。

わざわざ限られたスペースに情報を詰める意味

「まぁ、とはいえ、SNSやウェブからの発信力を求めている企業もまだ『そんな人がいればラッキーだけど』という程度だから、まずは、紙で伝えるところから始めればいいと思うよ」

「そうだね。僕が教えているように自分のアピールポイントを、奇をてらったような方法でなく、素直に伝えることでいいんじゃない」

「米田さんが言うように、それが一番だと思うよ。でも、それではほかの人との違いが示せないことが多いので、ある種の表現力が必要になってくるよね。例えば、トヨタ自動車の社内企画書がA3用紙1枚でまとめられているって知ってる?

これはあらゆる無駄を省くためのトヨタなりの“改善”と言われているけど、数枚にわたったパワポ(PowerPoint)で作られた企画書に比べると、1枚で全体を俯瞰できるという意味では、紙をめくる時間も、体力も、見た人が理解する時間という点でも、確かに無駄は省けている。

ただ、作る方は大変だね、無駄を省く……。つまりそぎ落とす努力が必要になってくる。なんたってA3用紙1枚すべてをまとめるわけだから。物理的な面積は限られているし、A4ならもっと小さい」

「たしかにそうだね。僕のところにも、業者の方が大学とコラボしたいといって企画書をもってくるけど、ほとんどがパワポで作ったものだなぁ。1枚目は、宛名とタイトルとその会社の名前だけが書いてある。しかも丁寧にカラープリントだったりするんだよね。もったいないよね」

「そうそう。米田さんもそう思うでしょ。ウチなんか小さなオフィスだから必然性がないかぎりカラープリントは禁止してるほどだし」

「カラーのほうがきれいで見やすいような気もしますけど」

「黒木さん、たしかにエントリーシートを手作業で色づけするのは別にいいんだけど、無駄に着色しても、あんまり意味ないよね。うるさいだけで」

そう言って僕は、ハイボールを口にする。最近は、少し飲み方を変えて、たとえハイボールであってもチェイサーをお願いするようにしている。

こうやって話をしてるとのどが渇く。その渇きを潤すためにお酒を飲む。よくしゃべる。またお酒を飲む。この繰り返しで酩酊(めいてい)状態が深くなっていく。

これじゃいかんと、最近になって、のどの渇きは水で潤すことを覚えた……。先日主治医に話して「いまになって?」と呆れられたのだが、まぁ、気づいただけ良いとしよう。

「それにね。限られた面積で企画を伝えようとすると、さっき言った表現力が必要になってくるんだよね。絵や写真は、わかりやすいけど、それだけ面積を取る。であれば言葉のほうが場所を取らない。じゃあ、どうするか?」

要素を削って“筋肉質”のメッセージにする

「そうですよね。イラストなどもわかりやすく伝えるのには重要ですが、それなりの面積をとりますよね……。そんなこと考えたこともありませんでした」

「最近はネットや電子書籍など、紙を使わないメディアが増えてきているから、みんな限られたスペース、紙面という概念を考えられなくなってきている。面積をね。どんどん文章は冗長になってきているし。

紙の場合、書籍はまだしも、雑誌、とくにファッションやデザインのビジュアル誌は企画ごとのページ数が決まっていて、文字数もデザイン的に決まっているから、原稿もその文字数に収めなければならない。

例えば、A4サイズの雑誌で2ページの企画なら、開いた状態でA3の大きさになる。そのなかに写真やイラスト、それに文章を入れて読者に伝えなければならないわけ。だから冗長な文章を削って筋肉質にして、それでいて、例えば、紀行文などの情緒あふれる文章にしなければならない」

「そうだよね。僕も昔それでアタマを悩ましたよ。どうしても1行多いんだけど、その1行を削るのに相当な時間を使ったりしてね」

出版社から大学教授に転職してきた米田も雑誌編集者時代のころを懐かしみながら話に加わってくる。

目の前には黒木が注文した「ベジタブルスティック クラブソース添え」。女性に一番人気らしい。たしかに可愛く盛りつけられた野菜たちを見るとうなずける。しかも添えられたクラブソースもカニの風味が豊かで美味しい。

こちらのコンテンツは日経BP社とアサヒビールの共同運営メディア「カンパネラ」より転載しております。

転載元URL:http://business.nikkeibp.co.jp/atclcmp/15/272043/100100007/

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