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それは香川県高松市にある「足袋(たび)」というバー。まさに隠れ家のような店だ。看板に店名はなく、足袋の絵だけが書いてある。門から飛び石が並び、その足下には水が流れ、点滅する蛍の光が、入り口へと誘ってくれる。しかもその入り口は、ちょっとかがまなければ入れない、いわゆるにじり口。まるで料亭に来たかと思うほどに、和の世界、侘び寂びの世界がそこに広がっている。初めて訪れた人は、このたたずまいに間違いなく驚く。
「本物を提供したい」という店主の森本さんのこだわりは、店内の至る所に見える。照明や椅子、棚、壁、床、さりげなく置いてある小物や本、すべてがただものじゃない。なかでも、見たことがないほど大きな一枚板のカウンターには、オレもびっくりした。森本さんはこれが見つかるまでに日本中を探したそうだ。 |
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これが、メニュー。右のページで旬鮮フルーツを選び、
左のページで味の好みなどを選ぶ。良くできている。 |
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こだわりは、建物の意匠にまで。壁は香川の名石「庵治石」、
照明は晩年を香川で過ごしたイサムノグチ。 |
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本物へのこだわりは、カクテルづくりにもあらわれている。地元で収穫される新鮮な旬のフルーツを常に揃えている。この前行ったときには、香川産のキンカン、高地産のフルーツトマト、うまそうなフルーツが並んでた。まずフルーツを選び、それからベースになる酒などの好みを伝えるのが、足袋のオーダースタイル。その日、オレはキンカンを選んだ。出てきたのは、オリジナルカクテルの「ゴーギャンの恋」。オレンジジンをベースに、完熟キンカンとフレッシュグレープフルーツでつくる。隠し味は1tspの和三盆。和菓子でよく使われる香川県名産の高級砂糖だ。キンカンの皮とシソ、チェリーでつくったガーニッシュと一緒に飲む。さっぱりとした甘味の、爽やかな香りのカクテルだ。実にうまい。
珍しい山羊のチーズと、骨付きをスライスするこだわり生ハムをつまみに飲んでいたら、うまそうなコーヒーの香りがただよって来た。聞いてみると、ここではカルーアミルクに、いれたてのエスプレッソコーヒーを使うのだという。スパイシーラムとエスプレッソ、ミルク、サトウキビのしぼリ汁でつくるカルーアミルク、オレも頼んでみた。甘すぎずに飲みやすい。コクもあり、何より香り高さが酔ったアタマをリフレッシュしてくれる。
そうそう、足袋ではシガーも楽しめる。そこで、オレはコイーバを選んだ。このカルーアミルクと合わせてみたかったんだ。思った通り、相性がいい。コイーバの煙りとカルーアミルクの香りが、オレをゆっくりと包んでいく。その瞬間、オレは本物のオトコに近づいた気がした。 |
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