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お酒に強い・弱いとはどういうことなのでしょうか

お酒を飲みはじめるとすぐに顔が赤くなるヒトがいる一方で、顔色を変えずに飲んでいるヒトもいます。顔がすぐに赤くなるヒトのほとんどは"お酒に弱いタイプ"だといえます。しかし、「自分は顔が赤くならないのでお酒に強いタイプだ。だからアルコール(エタノール)が身体から無くなるのが速いんだ」と思っていませんか?それは正しくありません。

実は、"エタノール"を分解(代謝)する能力はお酒に強い・弱いといった体質と直接的な関係はありません。
"アセトアルデヒド"を分解する能力がお酒に強い・弱い体質を決めているのです。
(文献1)

アルコールの分解についてはこちら

アセトアルデヒドとは、アルコールが肝臓などで分解される際に発生するものです。身体の中でアセトアルデヒドを分解する酵素の主役は、"アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase2、略してALDH2と呼ばれる)"であるといわれています。この酵素はすべてのヒトが持っているのですが、一部のヒトの酵素はアセトアルデヒドを分解する能力が弱くなっていることが分かっています。

アセトアルデヒドを分解する酵素
(ALDH2)の働きの違いによって
日本人は次の3つのタイプに分類されます。

○:お酒に強いタイプ(普通に飲める)/△:お酒が飲めるが弱いタイプ/×:お酒が飲めないタイプ
○:お酒に強いタイプ(普通に飲める)/△:お酒が飲めるが弱いタイプ/×:お酒が飲めないタイプ

血液のデータをチェック!

それでは、実際に飲酒を行った場合に、血液中のエタノール濃度やアセトアルデヒド濃度がどのようになっていくのかを見てみましょう。
40〜50歳代の男性が焼酎甲類(アルコール度数:16度)を空腹の状態で飲んだ場合の濃度変化を調べてみました。(飲酒量は体重当り同じ量になるように、体重が60kgのヒトで焼酎甲類150ml相当のアルコール量を飲んでいただきました))(文献2)

データ1 焼酎甲類を飲んだ後の血液中のアセトアルデヒド濃度

まずは、焼酎甲類を飲んだ後の血液中のアセトアルデヒド濃度を見てみます。左の図は"お酒に強いタイプ"、右の図は"お酒に弱いタイプ"の男性が飲んだ場合の結果です。

お酒に強いタイプ お酒に弱いタイプ

図1.焼酎甲類を飲酒した後の
血液中のアセトアルデヒド濃度(%)

ここがポイント!

明らかに"お酒に弱いタイプ"のヒトが血液中のアセトアルデヒド濃度が高くなっているのが分かります。アセトアルデヒドがこのような高い濃度になることで、不快感や頭痛、さらには吐き気などが生じてくるものと考えられます。なお、"お酒が飲めないタイプ"のヒトでの試験は実施しておりませんが、日本人を対象とした医学研究報告として、"お酒に弱いタイプ"のヒトよりもさらにアセトアルデヒド濃度が高くなることが確認されています。(文献3)

データ2 焼酎甲類を飲んだ後の血液中のエタノール濃度

では次に、血液中のエタノール濃度を見てみましょう。さきほどと同じく、左の図は"お酒に強いタイプ"、右の図は"お酒に弱いタイプ"の男性が飲んだ場合の結果です。

お酒に強いタイプ お酒に弱いタイプ

図2.焼酎甲類を飲酒した後の
血液中のエタノール濃度(%)

さきほどのアセトアルデヒド濃度とは違い、両者のタイプであまり大きな差は無いことがお分かりいただけるかと思います。

注)詳しく見た場合には"お酒に弱いタイプ"の方が"お酒に強いタイプ"に比べて少し濃度が高くなります。これは、"お酒に弱いタイプ"で高い濃度になるアセトアルデヒドがエタノールの分解を遅くする作用がある(文献4)ことが影響している可能性が考えられています。

ここがポイント!

以上の結果から、"お酒に強いタイプ"のヒトと"お酒に弱いタイプ" のヒトでは飲酒後のアセトアルデヒド濃度がかなり違っていることがお分かりいただけたかと思います。この濃度の違いがお酒に強い・弱い体質を決めていると考えられます。一方で、"お酒に強いタイプ"だからといって、身体の中からエタノールがより速く無くなったりするわけではありません。エタノールの分解にはALDH2以外の酵素や他の因子が関わっています。

適正飲酒で楽しく!

"お酒に弱いタイプ"のヒトはアセトアルデヒドの害を受けやすいので飲み過ぎには注意が必要ですが、一方で"お酒に強いタイプ"のヒトにおいても、たくさんのお酒が飲めてしまいますので、その場合アルコールの影響を受けることになります。いずれのタイプのヒトであっても飲み過ぎには注意が必要です。

適正飲酒で楽しく!
(文献1)
原田勝二:アルコール代謝酵素の分類と多型−日本人における特異性,日本アルコール・薬物医学会雑誌,36,85-106(2001)
(文献2)
大嶋俊二ら:適量飲酒における諸飲酒条件がアルコール代謝動態に及ぼす影響−酒類,ALDH2遺伝子多型ならびに食事の有無での比較−,日本アルコール・薬物医学会雑誌,46,357-367(2011)
(文献3)
Mizoi Y et al.: Involvement of genetic polymorphism of alcohol and aldehyde dehydrogenases in individual variation of alcohol metabolism. Alcohol. Alcohol., 29, 707-710(1994)
(文献4)
Dawson AG: Ethanol oxidation in systems containing soluble and mitochondrial fractions of rat liver. Regulation by acetaldehyde. Biochem. Pharmacol., 32, 2157-2165(1983)

※使用したデータは全て日本医科大学とアサヒグループホールディングスとの共同研究によるものです。