立ち飲み店は酒屋がやっているところが多く、酒は売るほどに多種多様なものが置いてある、しかも安い。仕事帰りに仲間と一杯やるのも、散歩の途中でひとりで寄って黙って飲むのもいい。とにかく気楽に自由に飲める。近所の常連さんが集い、その地域の歴史や話題などがいやでも耳に入ってくる。人と出会いふれあいを感じ、その会話がアテになる。つまるところ「立ち飲み」は庶民の文化なのだ。酒屋の「立ち飲み」から始まった立ち飲み店も今では個性溢れる様々なお店まで広がってきている。
神戸では、かつて製鉄業や造船業、港湾業などが盛んであった。そこでの過酷な仕事を終えた労働者達を迎える酒場が界隈に存在した。それが酒屋の一角にある「立ち飲み」である。神戸以外の県内でも造船の盛んな町や漁師町など、夜勤明けや早朝の仕事を終えた労働者達のためにできた立ち飲み店が、今でも多く残っている。
「立ち飲み」のおつまみは、乾きモノと缶詰が定番。今では居酒屋顔負けの店も少なくない。夏は冷奴、冬はおでんというスタイルの店が多い中、コンビーフや白アスパラの缶詰が見られる神戸の立ち飲み店は、洋風文化が早く入ってきたハイカラ文化と無関係ではない。また地域によっては蒸し豚や粕汁、紅生姜のてんぷらなどが提供され、それぞれの地域の食文化と深いつながりがある。
提供:「大阪立ち飲みページ」大西博司さん
兵庫県生まれ。インターネット上で大衆食堂や立ち飲みに関する情報を発信。代表的な著書は、『神戸立ち呑み 八十八ヶ所巡礼』、『神戸ぶらり下町グルメ 決定版』(以上神戸新聞総合出版センター)など。